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心の中の過去・現在・未来のことをしまっておける場所。大串半島にある瀬戸内海の絶景カフェ「時の納屋」/香川県さぬき市

心の中の過去・現在・未来のことをしまっておける場所。大串半島にある瀬戸内海の絶景カフェ「時の納屋」/香川県さぬき市

2024年6月30日、香川県さぬき市が同市の「大串自然公園」内に建設した「時の納屋」。
こだわりがつまった建物や家具、地元の食材をふんだんに使ったお食事やスイーツ、瀬戸内海がそばに感じられる大自然!素敵過ぎてついつい長居したくなる場所です。
今回はそんな建築・食事・自然を一度に楽しめるさぬき市のNewスポットをご紹介します。

時間をかけて自然を元の姿に戻していく

「時の納屋」は大串半島の活性化を目指し、さぬき市と民間企業が出資する株式会社「さぬき市SA公社」が立ち上げたプロジェクトです。

この場所に昔から自生していた植物の苗や芝生、石を置き、自然公園にふさわしい姿にゆっくりと戻していくことをコンセプトにしています。そのため建物付近にはマツ苗木がたくさん見受けられます。3〜5年で人間と同じくらいの背丈になるそうで、数年後はまた違った景色が期待できそうです。

人にやさしい建築と家具

お店に入ると開放的な店内が広がっており、思わず天井を見上げてしまいます。そこで目に入ってくるのはスギ材で組まれた「挟み梁」。さらに讃岐平野に見られるタバコ乾燥小屋「ベーハ小屋」から知見を得て、風通しをよくさせる「越屋根(こしやね)」が設けられています。床や壁も無垢のスギが張り巡らされており、今後の経年変化は見ものです。
建築家・堀部安嗣氏の設計による建物は美しさや過ごしやすさ、歴史や自然への敬意を感じます。

店内からは目の前に広がる瀬戸内海をただぼんやり眺めることができ、頭を空っぽにするとはまさにこのことだ!と初めてわかった気がします。目の前に見えるのは小豆島。天気のいい日は窓を全開放してくれます。雨の日は閉められた窓に雫が垂れ流れ、水墨で描いた力強い屏風のような景色になるんだとか。

家具はさぬき市の木工職人・二宮靖夫氏によって製作されたもので、建物と同じくスギで作られた家具は建物との統一感を感じます。椅子の座面はペーパーコードで編まれており一度座ってしまうと身体にフィットして安定感抜群!またほとんどのテーブルは一本脚ですが、窓側両端のテーブルのみ四本脚かつ机の高さが少し高くなっています。車椅子の方がスムーズにお食事ができるようにと考えられた作りです。

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入ってすぐ右手には「時の小間」という半個室のスペースがあります。8人で囲える大きなテーブルは一枚板。もちろん無垢のスギ。二宮氏がご逝去された大切な師匠への思いを込めて「時の納屋」のために作られたそうです。まさに「時の納屋」ですよね。職人の大切な過去をしまっているわけです。

ちょっと余談ですが様々なメディアで取り上げられている「時の納屋」。取材時は人がいなくて空っぽの内観写真が多いですよね。実状は上の写真をご覧の通り。11時オープンのため11時10分頃に到着しましたが、すでに行列が…!現在予約は受け付けていないそうなので数量限定メニューをお求めの方は早めに並ぶことをおすすめします。もし待つことになっても建築や店内からの景色が退屈させないのでご安心を。

地元の食材をふんだんに使ったお食事

楽しく待ち時間を過ごしたあとは案内を受けていざお席へ。「時の納屋」ではなるべく地元の食材を使ったメニューや地元の職人たちが作った食器を選んでいるそうです。中でも限定10食の樽のおにぎりランチ(税込1,300円)と数量限定のスイーツプレート(税込1,500円)は早い時間から売り切れになる看板メニューなんだとか!

看板メニューはすでに完売していたので今回は牛すじカレーを注文。

赤ワインでとろとろに煮込まれた牛すじが入ったスパイシーなカレー。使用されているワインは「日本ワインコンクール 2024」で銅賞を受賞した「ソヴァジョーヌ・サヴルーズ 2022」。時の納屋から車で3分に位置する「さぬきワイナリー」で醸造されています。

「牛すじカレー(サラダ付き)」1200円(税込)

そして、このカレー皿にも心温まるやさしさが。カレーを食べる時にスプーンで綺麗にすくえるように縁が工夫されています。善通寺市の作陶家・土井康治朗氏が作るせとうちブルーの美しい器に、お料理を平等に楽しませてくれるやさしさを感じます。

「クロックムッシュ」800円(税込)

そして二品目は新鮮な野菜を使ったサラダが添えられたクロックムッシュ。生ハムとベシャメルソースの相性が抜群!濃厚なのにしつこさはなくさらりと食べられるおいしさです。驚いたのは石釜で焼いたパンの柔らかさ。もちもちふわふわでもう一個食べたくなります。

「すももソーダ」600円(税込)

カレーを食べたあとはなんだかスッキリしたものを飲みたくなりませんか?さぬき市の「飯田桃園」で作られたすももをふんだんに使ったすももソーダは、甘酸っぱさが口の中をスッキリさせてくれます。

お菓子作りが得意な所長が作るバスクチーズケーキ

「バスクチーズケーキ」600円(税込)

食後のデザートとコーヒーはマストですよね?ケーキにもさぬき市の「かなたまキッチン(有限会社金江養鶏場)」の卵や東かがわ市にある「三谷製糖」の和三盆などが使われており、地元の食材を使うことへのこだわりを感じます。フォークを差し込むとお皿に到達するまでにずっしりとした重みが……。食べる前から濃厚さを感じさせます。味は言わずもがなですがおいしいの一言です。

「時の納屋オリジナルブレンド」600円(税込)

バスクチーズケーキのお供にと勧められたら、頼むしかありません。ここで味わえる「時の納屋オリジナルブレンド」は、自然の風味を感じさせるよう、またお店の雰囲気にぴったり合うように特別に焙煎された深煎りのコーヒーです。特別な日に飲みたくなるような一杯で、量は多くなくても、この一杯で十分に満たされます。

「時の納屋」の魅力

「時の納屋」では自然からの恩恵を常に感じることができます。近くに感じる空や、目の前に広がる海、呼び戻された緑、それを支える土、そして店内には無垢のスギ。またそれぞれの分野の職人たちが自然や香川県を思い、考え、賛同し、この場所を作り上げているように感じました。まさに自然と人との融合です。

そして隠れた魅力は何なのでしょうか?私は自信を持って、満濃孝さんだと言えます。彼はさぬき市からの出向職員で、「時の納屋」の所長を務めており、少しでも力になりたいという思いから広報や企画業務に忙しい日々を送っています。満濃さんは先ほどご紹介したバスクチーズケーキを作っていたり、お食事のメニューを考案したりもするんだとか!趣味であるお菓子づくりの知識がここで活かされているようです。

「時の納屋」の建物や家具、料理について話している満濃さんは本当に夢にまっしぐらな一人の少年に見えます。いくつになっても熱い思いを持って語ってくれる、人と自然のために動いてくれる、あの姿は多くの人を惹きつける魅力があります。実際にお会いしすると、こちらが自然と笑顔になる不思議なパワーを持った人だといえます。

見るべき建築「テアトロン」

「時の納屋」から車を2分走らせるとさぬき市野外音楽広場「テアトロン」があります。こちらは、中四国一の規模を誇る多目的な野外劇場です。香川県出身の建築家・山本忠司氏によって設計されました。

入口で少し戸惑ったので紹介しておきたいと思います。

特にイベントがない日は正門からではなく向かって右側の小さな門から入ることができます。気軽にいつでも入れるのは嬉しいですね。

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下まで降りたらまた上らなければならない運命が待っていますよね。そんな運命を避けたい方はここから見るだけでもかなりの満足感が得られます。しかし降りてみたくなるのがライターの性と言いますか、好奇心でしょうか。

長い階段を降りていきます。建物や瀬戸内海が見えてきてわくわくです。「テアトロン」の座席はスタンド席が約5,000人、芝生席が約5,000人で、合計で約10,000人収容できるそうです。

この正面からの景色、迫力満点!ここでの音楽イベントは気持ちよさそうですね。瀬戸内海の絶景と大好きなアーティストが奏でる音楽、そして古代ギリシャのようなステージ、最高に決まっています。余談ですが真ん中のステージで叫んだら自分の声がすごく響くんです。まるでスターになったような感覚なのでぜひ皆さんもやってみてください。

人と自然の魅力を感じるさぬき市

今回はさぬき市にある「時の納屋」をメインに「テアトロン」もご紹介しました。一度に建築・食事・自然を堪能できて幸せいっぱいの時間を過ごすことができました!おしゃれでおいしいだけじゃない、人と自然の魅力をたっぷり感じる旅に出かけてみませんか?そしてその旅で感じた思いをぜひ「時の納屋」にしまってきてくださいね。

*2024年10月取材時の価格となっております。最新情報を確認してお出かけください。

関連地域

香川県

瀬戸大橋を介して本州と四国を繋ぐ四国の玄関口、香川県。県民のソウルフードとして親しまれている「讃岐うどん」は、県外からも多くの観光客を集めています。歴史的な観光資源と個性豊かな島々に恵まれてているのも特徴。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星を獲得した「栗林公園」、長い石段で有名な「金刀比羅宮」に加え、どこか地中海を思わせる美しい小豆島の他、せとうちの風景と現代アートを融合させた取り組みも人気を博しています。

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