アート・文化
予約注文で約3年待ち!?香川県の伝統的工芸品 讃岐一刀彫のPOPだるま
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- 地域
- 香川県
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- 関連タグ
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- フォトライター
- by 瀬戸内Finder 編集部
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- 最終更新日
- 2017年05月16日
香川県琴平町に、「こんぴらさん」という愛称で地元の人々に親しまれている金刀比羅宮があります。
金刀比羅宮は参道の長い石段が有名で、本宮まで785段、奥社までの合計は1368段にも及びます。
その参道の石段30段目に、山中象堂(やまなかぞうどう)はあります。
讃岐一刀彫は、叩きノミの刀痕をそのまま仕上げに生かした彫法で、叩きノミの荒さと仕上げノミの細やかさの調和が魅力といわれており、香川県伝統工芸品にも指定されています。
ぐっと睨みつける、お洒落な「だるまさん」。
こちらが、山中象堂で人気沸騰中のPOPだるまです。
このPOPだるまも一刀彫の工芸品で、1本のクスノキをノミで手彫りした後、色彩豊かなデザインがほどこされているのが特徴です。
工程はすべて手作業で行っており、1日に1つ作るのがやっとであるため、現在予約注文から手元に届くまで、およそ3年待ちという人気ぶりです。
100年以上、受け継がれてきた伝統工芸から、どのような経緯でPOPだるまが誕生したのでしょうか。
現在、山中象堂は三代目の山中竹志さん、四代目の希(のぞみ)さんの親子二人三脚で営まれています。
四代目の希さんは、もともとは大学で美術を学んでいたそうです。大学卒業後、家業を手伝うことになり、三代目の指導のもと修行に励んでいました。
ある日、だるまの練習掘りをしていたときに、彫る箇所がわかるようにと木材に鉛筆で書かれている印を見て、「この印を、そのまま水玉模様にしたらかわいいんじゃないか」と思いついたそうです。
香川県の県産品コンクールにPOPダルマの試作品を出してみたところ、残念ながら落選してしまったものの、親子ふたりには「これはいける」という感触がありました。
コンクールで出品した3寸(高さ10センチ)から2寸(高さ7センチ)にサイズを変更し、価格も6000円くらいと買い求めやすいように設定して店先で出してみたところ、どんどん売れていったそうです。
当初は、渦とボーダーとドットの三種類を定番デザインとして売り始めたものの、「こんなデザインはできますか」といった相談が次第に増え、オリジナル柄の注文も受けるようになったそうです。
先祖代々、受け継がれてきた技巧と現代的なデザインが融合して誕生したPOPだるま。
三代目の高い技術力で丹精に手彫りされただるまに、四代目の時流をつかんだデザインをほどこすことで、讃岐一刀彫という工芸品の価値や魅力が、あらためて注目されています。
怒ったような少しこわい表情なのに、どこか可愛らしさがある。
これから3年後の未来を想像しながら、あなただけのPOPだるまを作ってみませんか。
瀬戸内ファインダー フォトライター 小林有美
関連地域
香川県
瀬戸大橋を介して本州と四国を繋ぐ四国の玄関口、香川県。県民のソウルフードとして親しまれている「讃岐うどん」は、県外からも多くの観光客を集めています。歴史的な観光資源と個性豊かな島々に恵まれてているのも特徴。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星を獲得した「栗林公園」、長い石段で有名な「金刀比羅宮」に加え、どこか地中海を思わせる美しい小豆島の他、せとうちの風景と現代アートを融合させた取り組みも人気を博しています。