体験
島を一周!塩飽諸島・本島を自転車でぐるっと満喫プラン/本島(香川県丸亀市)
丸亀港から塩飽諸島『本島』へ
高松市から西へ約40分。やってきたのは、丸亀城や丸亀うちわなどでも知られる丸亀市の丸亀港です。
今回向かうのは、塩飽諸島の中心・本島(ほんじま)。かつては塩飽島や塩飽本島と呼ばれ、塩飽水軍の根拠地でもあった歴史の島です。
本島へのフェリーは一日8便あり、岡山県の児島港からも一日4便出ているので比較的アクセスしやすい島なんです。
気持ちがいい天候の中、海をかき分け進んでいくフェリー。
デッキに出ると、香川と岡山を繋ぐ瀬戸大橋が右手に見えてきます。本島から瀬戸大橋の距離はおよそ2kmと意外にも近いことに驚きです。
この瀬戸内ならではの多島美と船旅を楽しむためだけに、本島へ渡る観光客の方も少なくないのだとか。
フェリーに揺られること35分、いよいよ本島に到着です!
レンタサイクルで本島1周チャレンジ!
今回一緒にやってきたのは、丸亀市観光協会の冨家(とみいえ)さん。丸亀市の島や山の観光情報に人一倍詳しい彼女と共に、本島をレンタサイクルで1周してみましょう!
「本島は周囲16kmほどの小さな島。現地では普通自転車もレンタルできますが、本島は急な坂があるので、脚力や体力に自信のない方は電動自転車がおすすめです。数に限りがあるため事前予約ができないので、注意してくださいね」。
それではレッツゴー!
スポット1:本島スタンド(honjima stand)
……と意気込んだ私たちでしたが、この日島に到着したのはお昼頃。腹が減っては戦ができぬ!ということで、早速港の本島観光案内所の中にある『本島スタンド』にやってきました。
2018年11月にできたこちらのカフェは、「島外の方と島民をつなげるレセプション」をコンセプトに、島外からやってくる観光客や地元の方にとって居心地のいい交流の場となっています。
シンプルでお洒落な店内をぐるりと見渡していると、カウンターに架けられた干しダコにびっくり。
実はタコは本島の名産品のひとつで、定期的にタコのお祭りが行われているほどなんです。
今回注文したのは、週替わりの『お魚定食』と『自家製ジンジャーエール』。
本島で獲れた鯛に、ゆずを使用した出汁、旬のロメインレタス・トレビス・ビーツ・カリフラワーと里芋のピューレをあしらったメインの一品は、ひとくち口にしただけでまるで幸せが溢れ出すかのよう……!
このさつまいものスープも驚くほど甘くてクリーミーで、叶うならば永遠に飲み続けていたい……
本島スタンドのお魚定食は、本場フランスで経験を積んだ若手シェフが、地元で獲れた旬なオーガニックの食材を使って仕上げるここだけのメニュー。
新鮮な食材、そして地産地消を形にしたこのおいしさに出合うためだけに本島を訪れる価値があるな、と確信した多幸感溢れる上質なランチでした。
ごちそうさまでした!
本島ガイドと歴史的建造物を巡る
お腹も満たされたところで、島在住の観光ガイド・信原(のぶはら)さんのツアーに参加してみましょう!
本島は、昔から操船・造船の技術が非常に高く、廻船業で豊かになった島。島内には、その歴史を垣間見ることができる多くの文化財が残されています。
スポット2:蕨状の笠木が珍しい!『木烏神社鳥居』
本島で最も大きな神社・木烏(こがらす)神社にある『木烏神社鳥居』は、大阪城築城にも携わった薩摩の石工・紀加兵衛(きのかへい)によって、寛永4年(1627年)建立された市指定有形文化財。
笠木(一番上部の横材)の両端が丸く反り上がっているのが特徴で、このような形はなかなか日本では見れないそう。
また、元々砂浜で地盤が緩い土地のため、通常の鳥居のような台石を据えず、掘った穴の中に建てることで鳥居の安定を保っているという点も特徴です。
スポット3:160年前に建てられた芝居小屋『千歳座』
神社の境内にある『千歳座(ちとせざ)』は、廻船や大工の分野で高い技術力を持っていた塩飽大工によって、文久2年(1862年)に建設された本格的な芝居小屋。
中にある直径約7.9mの回り舞台や、上から雪などを降らすための竹製のぶどう棚(簀の子とも)などの立派な仕掛けからは、当時の島の繁栄が伺えます。
「ここでは、瀬戸大橋ができた平成元年(1989年)には修復工事のこけら落としとして、歌舞伎の興行がありました。今でも島の文化祭などで年に2回ほど使用されていますよ」。
※千歳座の内部はガイドツアーで見学可能(一般公開はされていません)
次のスポットに向かう道中で、野生のヌートリアを発見!
本来外来種であり、可愛い顔をしつつも島民を悩ませているという害獣の彼ら。危険なので、無闇に近づいたり餌をあげたりすることは控えてくださいね。
スポット4:かつての海の政所『塩飽勤番所』
次に自転車を東に走らせ訪れたのは、国の史跡にも指定されている『塩飽勤番所』。塩飽全島を治めるために寛政10年(1798年)に建造された政所跡です。
本島は海上交通の要所であり、海上輸送の功労により塩飽諸島の統治を許された特別な島でした。
この場所には、海底から出土されたナウマン象の化石に始まり、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康などの天下人から送られた朱印状、そして塩飽出身の水夫が多く乗船したとされる、太平洋を横断した日本初の船・咸臨丸(かんりんまる)の模型など、本島の歴史を物語る重要な資料が数多く所蔵・展示されています。
勤番所を出て海に向かうと、岡山へと続く瀬戸大橋が真横に見える絶景ポイント『新在家海岸(しんざいけかいがん)』に到着しました。
静かな波の音や爽やかな青空に包まれて自転車を漕ぐ時間はなんとも爽快!
このまま海沿いを走っていくと右手に見えてきたのが……
スポット5:島民手作り!新しい観光名所『幸せの鐘』
このフォトジェニックな新名所、『幸せの鐘』です。
海と一緒に記念撮影ができるこのスポット、なんと島民の手作りだというから驚き!
流木で作られたこの素敵なモニュメントの下で、瀬戸内海と瀬戸大橋を眺めながら思い出の写真を撮ってみてはいかがでしょうか。
スポット6:伝統的な町屋建築が趣深い『笠島まち並保存地区』
次にやってきた笠島エリアにある『笠島まち並保存地区』は、江戸後期から戦前の建物による街並みが歴史と文化を感じさせてくれる、風情のある観光名所。
笠島は塩飽水軍・塩飽廻船の拠点として栄え、香川県で唯一、国の「重要伝統的建造物群保存地区」の選定を受けている地区です。その複雑に入り組んだ通りには、廻船業に関する商店や問屋などが軒を連ねていたとされています。
200m四方ほどの広さなので、出格子や虫籠窓など、塩飽大工による伝統的な町屋建築を楽しみながらさくっと町歩きができます。
地区内にある案内所『笠島まち並保存センター(真木邸)』では、塩飽大工の建築について説明を受けることができたり、当時の生活に触れることができる小民具なども展示されています。
『ふれあいの館(旧真木邸)』では笠島地区のジオラマ、『文書館(藤井邸)』では古文書が一般公開されており、ガイドの信原さんが細かく説明をしてくれます。
普通に観光するだけでは気づかないようなポイントや、地元民ならではの視点で歴史や情報をより深く教えてもらえるのは、ガイドツアーの醍醐味。
特に歴史に興味がある方は、ガイド付きの観光で本島を楽しみ尽くすのがおすすめですよ!
本島一周旅〜後半戦〜スタート!
ガイドの延原さんとお別れしたら、ここからが本島自転車一周〜後半戦〜の始まりです!
海沿いをズンズンと進んでいく私たち。
島内には、瀬戸内国際芸術祭の際に製作され、以降継続展示されているアート作品も点在しています。
海の向こうに見えるのは、アレクサンドル・ポノマリョフ氏の『水の下の空』という作品。かつて瀬戸内海を行き交っていた和船をイメージして作られたとされています。
水平線とその奥に浮かぶ島々のシルエットにうっとり。
潮風に吹かれながら向かったのは、島の西側に位置する生ノ浜(いきのはま)。
スポット7:珍しい二連式の『夫婦倉』
ここにあるのが、珍しい二連式の木造本瓦葺の土蔵。その名も『夫婦倉(めおとぐら)』です。
二つ連なっている姿からこの名前がついたというこの倉は、薪廻船業を営んでいた長尾家が嘉永5年(1852年)に建築し、現在は塩飽の繁栄を伺える貴重な歴史遺産となっています。
昭和61年(1986年)に市の指定文化財になり、移転・復元工事を経て現在の姿になった夫婦倉。
なまこ壁が美しく、凛と立つその姿は一見の価値ありです!
さあ、次へ向かいましょう。目の前の風景が青から緑に変わり、道中ではヤギにも遭遇(!)。
勾配のある山道を抜けやってきたのは……
スポット8:本島のパワースポット!『ゆるぎ岩観音』
本島のパワースポット、『ゆるぎ岩観音』です。
こちらは、岩の中央に彫られた如意輪観音(にょいりんかんのん)が頬に手を当てていることから、歯痛を治してくれる仏様として信仰されてきました。
「上に乗った石が落ちそうで落ちないことから、合格祈願を目的に訪れる学生もいるみたいですよ」。
私も歯痛に悩まされることがないように、しっかり挨拶してきました。
島から望む美しい夕陽と瀬戸内海
いよいよ旅は終盤へ。
港への帰路に着いていると、夕陽がゆっくりと海面に沈みゆく瞬間に出合いました。
漕いでいた自転車を停めて、しばし空の移ろいゆく表情に見とれます。
海の音や風にそよぐ草木の音しか聞こえないこの場所で、ゆっくり静かに時を感じる。島旅の特権だなあ。
本島一周を無事果たし、最終便で丸亀港へと向かいます。
夜に変わろうとする空を横目にゆっくりと進む船路。
まるで一秒一秒が壮大な自然のショーのようで、瀬戸内の美しさをしみじみと体感できるひとときが島旅を美しく締め括ってくれました。
塩飽諸島・本島を自転車で巡る満喫プランはいかがでしたか? 今回は、初めて訪れるあなたにおすすめのルートを紹介してみました。
歴史を知ることで、より味わい深い旅になること請け合いの本島トリップ。かつて栄華を極めたこの島には、今でもその息遣いを感じられる建築や町並みが残っています。
本島に限らず、瀬戸内には地元民も知らない離島の魅力がたくさん眠っているはず。あなたも早速島旅の準備を立ててみませんか?
瀬戸内Finderフォトライター 山田 芽実
関連地域
香川県
瀬戸大橋を介して本州と四国を繋ぐ四国の玄関口、香川県。県民のソウルフードとして親しまれている「讃岐うどん」は、県外からも多くの観光客を集めています。歴史的な観光資源と個性豊かな島々に恵まれてているのも特徴。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星を獲得した「栗林公園」、長い石段で有名な「金刀比羅宮」に加え、どこか地中海を思わせる美しい小豆島の他、せとうちの風景と現代アートを融合させた取り組みも人気を博しています。