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ゴミ問題の解決を循環型経済と共同経済から学ぶ宿泊体験施設/上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY(徳島県勝浦郡上勝町)

ゴミ問題の解決を循環型経済と共同経済から学ぶ宿泊体験施設/上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY(徳島県勝浦郡上勝町)

すべての人に問いかける「?」の建物とは

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2021年3月1日時点の総人口が男性718人・女性782人の合計1,500人。徳島県の中山間部にある上勝町は、神山町と並んで全国的に知られている地域の一つです。
この町が有名になった理由は、2003年に日本の自治体として初めて『ゼロ・ウェイスト宣言』をしたこと。2020年までに「焼却・埋め立てゴミをゼロにする=焼却・埋立処分をなくす」という目標に向け、先進的な取り組みを続けてきました。

そのシンボルとして、2020年5月30日にグランドオープンしたのが、廃棄物分別回収施設、町民のコミュニティー施設やオフィススペース、そして、体験型宿泊施設が一つになった新しい町の公共施設。上空から眺めると「?」の形になる『上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY(以下:WHY)』です。

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「上勝町のリサイクル率は2018年に全国平均の4倍になる8割以上を達成していますが、それでも約2割のゴミをどうするかという課題が残っています。町民の努力だけではもう解決できないところまで来ているんですね。町外の事業者や自治体、研究機関と協力する必要があると考えています」と語るのは『WHY』の運営を担う株式会社BIG EYE COMPANYでCEO (Chief Environmental Officer)を務める大塚桃奈さん。
ここでは、ゴミという地域課題の解決と同時に、社会全体のサーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進していきたいと教えてくれました。

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『WHY』のなかで体験型宿泊ができる施設が『HOTEL WHY』です。
コンセプトである「ゼロ・ウェイストアクション」をもとに、チェックイン時には“STUDY WHY”と題した施設案内ツアーを開催。上勝町の特徴の一つであるゼロ・ウェイストの取り組みを学ぶことができるほか、チェックアウト時には町民が普段から行っている13種類45分別のゴミ分別も体験可能です。

できるだけゴミを出さない工夫が満載!

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施設全体が「?」型の『WHY』の「●」に当たるのが『HOTEL WHY』。ストーンヘンジのような石が敷かれた円形のホールから4つの部屋へ向かうことができます。

各部屋は最大4人まで宿泊可能なメゾネットタイプのつくり。空を見上げることができる構造も強く印象に残るのではないでしょうか。

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美しい上勝町の景色が眺められる窓は、町内から出た廃材となった建具などをリユースしたもの。サイズの異なる建具の組み合わせが、通常の建物にはないダイナミックなリズムを生んでいます。家具もまた不用品を活用したものですが、きっと指摘されなければ気がつかないでしょう。

この部屋は窓の外にデッキがあり、くつろいで読書をすることも可能。宿泊時に使用する石鹸やコーヒー豆の計り分けや量り売り容器は貸し出し制、不要なゴミを出さない工夫が随所に見られます。

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夕食はついていないため、事前に各自でお店を調べる必要があります。それもゴミを出さず、町内の経済を循環させるための仕掛けの一つ。『WHY』から車で約6分の場所にある月ケ谷温泉のレストランやイタリアンレストラン『PERTORNARE(ペルトナーレ)』などへ出掛けてもいいですね。
朝食はマイクロブルワリー『RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store』から配達してもらえます。フィッシュカツと季節の野菜をベーグルに挟み、特製のアチャールマヨネーズを塗って、オープンサンドのように食べることができるとか。容器も捨てられるものではなく、再利用できるものを使用しています。

自然にゴミを減らすことを意識できるように

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オープンして1年目の『WHY』ですが、すでに来場者は述べ5,000人を突破。「自治体関係者や企業人をはじめ、家族連れや学生など、さまざまなバックグラウンドを持つ方々が“ゼロ・ウェイスト”に興味を持ち、上勝町で学ぶためにご利用いただいています」と大塚さん。

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たとえば、ここは“ゼロ・ウェイスト”の理念に共感した企業や教育機関などにレンタルされるサテライトオフィス『コラボレーティブラボラトリー』。建築と設計を担当した中村拓志&NAP建築設計事務所による美しいデザインに囲まれ、働きながら自然とゴミを減らすことを意識できるでしょう。

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こちらの『くるくるショップ』も、ぜひ立ち寄ってほしいところ。町民が不要になったモノを持ち込み、訪問者であれば誰でも持ち帰ることができる無料のリユースショップです。
一升瓶ケースを活用した受付台や陶器の破片を敷き詰めた床なども注目ポイント。「モノのやりとりは重さで管理しており、今まで年間約9トンのモノが上勝町から循環しています」。

日本最高の分別を自分自身で体験する意味

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『HOTEL WHY』に宿泊後、チェックアウト時には町民が普段から行っている13種類45分別のゴミ分別を体験することができます。各部屋に設置された分別かごを持ち、スタッフから説明を受けた後で『ゴミ分別所&ストックヤード』へ。ものにもよりますが、一つの製品であっても実は驚くほど細かく分けられることがわかるでしょう。

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生ゴミが出た場合は、神奈川県の葉山町で考案された生ゴミ処理機〈キエーロ〉へ投入。これはコンポストの一種で、大きめの木箱に透明の屋根を斜めにつけたものに黒土を入れ、バクテリアの力で生ゴミを分解するというもの。時間が経てば堆肥となるため、自然へ還る仕組みとなっています。

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「ここがオープンして約1年。ようやく地元の方々に受け入れられつつあると感じています」とCEOの大塚さん。当初は周囲から「こんなところまで泊まりに来る人がいるのか」など、批判的な意見もあったようですが、実際に訪れた町外の人々の反応も良かったことから、少しずつ『WHY』の役割について理解が進んできたと感じているそうです。

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『WHY』の運営を担う株式会社BIG EYE COMPANYのCEOである大塚さんはもともとファッションが好きで、官民協働留学奨学金制度を利用してロンドンへ留学。次第に「服」から「暮らし」や「コミュニティー」へと興味が移るなか、上勝町のことを知り、大学卒業と同時に移住したといいます。
「上勝町の“ゼロ・ウェイスト”には暮らしを支える“もの・ひと・こと”にあらためて思いを馳せ、自分の生活を自分の手に取り戻すヒントが隠されていると考えています」。

今すぐに訪れることは難しい状況かもしれませんが、機会があれば足を運んでみてください。なぜゴミが生まれるのか、そして、なぜ捨てられるのか?『WHY』からの問いかけは、まだ始まったばかりです。

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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四国八十八ヶ所のスタート地点となる徳島県。東西を山に囲まれ、扇状に広がる徳島平野、その先に広がる瀬戸内海。海の幸、山の幸に恵まれ、新鮮な食材を楽しむことができます。また目を楽しませてくれるのは本場の「阿波踊り」。見て楽しむだけでなく、観光客も参加して楽しむことができるのも魅力の一つです。瀬戸内海が魅せる鳴門の渦潮や、秘境祖谷のかずら橋、大歩危峡の川下りなど、徳島の自然も満喫してください。

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